用語集

放射線α線β線 γ線とX線電子線(electron beam)粒子線(particle beam)重粒子線陽子線(proton beam)炭素イオン線(carbon ion beam)中性子線(neutron beam)治療計画治療シミュレーションボーラスコリメータイオン源装置線形加速器シンクロトロン吸収線量線量集中性生物学的効果ブラッグピーク(Bragg peak)マイクロサージェリーX線CTMRIPET-CT(Positron Emission Tomography-Computed Tomography)がん対策基本法第3次対がん10カ年総合戦略がん診療連携拠点病院がんプロフェッショナル養成プラン21世紀COEプログラム先進医療T N M 分類QOL5年生存率放射線治療医医学物理士放射線治療専門技師放射線治療品質管理士日本放射線腫瘍学会(JASTRO)日本医学放射線学会(JRS)日本放射線技術学会(JSRT)日本医学物理学会(JSMP)PTCOG

放射線
高いエネルギーの電磁波や粒子線を総じて放射線と呼ぶ。放射線にはα線、β線、γ線、電子線、中性子線、重荷電粒子線、X線などがある。
放射線の種類によりそのふるまいが変わる。一般に放射線は物質の中を通るときエネルギーを失っていく。放射線と物質中の原子が反応して物質にエネルギーを与える為である。放射線のエネルギーが高いほど物質を透過する能力が高くなる。また、生体を放射線が通過する場合、細胞のDNAは放射線が生体に付与したエネルギーにより損傷する。これらの性質を生かして病気の診断やがん治療を行うことができる。

放射線の種類

α線
原子核のアルファ崩壊にて放出される放射線である。ヘリウム(He-4)の原子核がその正体である。空気中では線源から数cmで止まってしまう。

α線

β線
原子核のベータ崩壊にて放出される放射線である。電子がその正体である。

β線

γ線とX線
いずれも高いエネルギーの電磁波である。γ線は原子核内の反応でできる電磁波を指し、X線は原子核外の反応(電子の遷移等)でできる電磁波を指す。両者とも放射線治療や診断に用いられている。

γ線

X線

電子線(electron beam)治療
電子を加速して得られる高エネルギーの放射線。電子に電圧をかける事により加速し、エネルギーが高ければ薄膜を通過して外界に飛び出させることができる。電子線は放射線治療に用いられる。
粒子線(particle beam)
放射線のなかで質量を持った粒子のビームのことである。
粒子線の代表的なものとして、陽子線、中性子線、α線がある。(放射線治療の分野では電子線と電子より重い粒子線に区別している場合がある。すなわち、一般的な「放射線」が従来治療に用いられてきたX線、γ線、電子線であり、「粒子線」は電子より重い(電子を含まない)放射線である、というように区分されることが多い。)
粒子線の中で現在治療に用いられているものに陽子線と炭素イオン線がある。中性子線はホウ素中性子捕捉療法として臨床研究に用いられている。
重粒子線
放射線治療の分野では、重粒子とは一般にヘリウムより重い粒子のことをいい、これを高速に加速したものを重粒子線という。原子核の構成要素である陽子と中性子(これらを「核子」という。)により構成されている粒子(一部の素粒子を含める場合もある)を加速器で加速したものである。
陽子より重い重粒子線を重イオン線というが、この重イオン線のことを重粒子線と呼ぶことが多い。群馬大学の重粒子線治療では、炭素イオン線を用いる。

重粒子線の種類

陽子線(proton beam)
陽子は原子核を構成する粒子(核子)の一つで、陽子線は陽子の流れ(粒子線)をいう。陽子を加速器で高エネルギーまで加速すると透過力の大きい電離放射線となる。陽子線はその停止位置付近に明確なブラッグピークを持つ。
炭素イオン線(carbon ion beam)
炭素イオンを用いた(重)粒子線のこと。炭素イオン線も陽子線と同様にブラッグピークを形成する。陽子線と比べてブラッグピークより深い部分で若干線量が大きくなる。
群馬大学では、炭素イオンを用いて治療する。
中性子線(neutron beam)
中性子は原子核を構成する粒子(核子)の一つで、中性子線は中性子の流れをいう。中性子は電荷を持たないので原子核内に容易に入ることができ、核反応を起こさせるのに使うことができる。
止める場合は、鉛等で速度を落としてから、水、コンクリートのように水素原子をたくさん含むものに当てて止める。
治療計画
放射線治療を行うためには、体の中のどの部位にどれだけの放射線を照射するのかをあらかじめ計画しておく必要があり、がんの位置特定、照射方向、照射回数、線量、治療具設計情報など治療照射に必要な条件を決める作業を「治療計画」と呼ぶ。治療計画を行うためにCT画像が用いられる。特に、その過程で体内の線量分布を計算することを限定して「治療計画」と呼ぶことも多い。コンピュータを用いることで、より高精度な計画がたてられるようになった。
治療シミュレーション
治療計画用CT画像を取得した後、治療計画や治療照射に必要な情報を取得する一連の作業を「治療シミュレーション」という。照射方向や照射ポート位置を特定するために行う。

炭素イオン線治療の流れの一例

ボーラス
患者治療具の一種。重粒子線の打ち込み深さをがんの形状に合わせるために、場所により厚みを変化させたもので、ポリエチレン等が用いられる。これを治療時に照射ポートの出口すなわち患者の直前に設置する。重粒子線をできるだけ患者のがんに集中させ、その奥側にある正常組織には極力当てないために患者毎に作られている道具のこと。

ボーラス
(出典:放医研ホームページ)

コリメータ
がんの形状に合わせて、広がりのあるビームの周辺部を除去(遮蔽)するために用いられる金属製の器具。多葉コリメータ(マルチリーフコリメータ)と患者コリメータがある。
「多葉コリメータ」は、厚さ数ミリメーターの金属板を数十対ビーム軸と平行に積み重ね、各リーフを標的形状に合わせて自動的に移動させることにより、照射野形状を形成するものである。
「患者コリメータ」は、多葉コリメータよりも細かい形状を形成したいときに、患者(ポート)ごとに工作されるもので、照射時に照射ポートに取り付ける。

コリメータ
(出典:放医研ホームページ)

イオン源装置
物質を強制的に電離してイオンを発生させる装置。本施設ではイオン源装置は重粒子線照射装置の一部であり、メタンガス等の物質の中の炭素原子から炭素イオンが生成される。イオン源で生成された炭素イオンは、線形加速器、シンクロトロン加速器で加速され治療室に運ばれる。
線形加速器
荷電粒子を直線状に並べた加速電場(ギャップ)によって加速するものを「線形加速器」と言う。本施設では炭素イオンを主加速器であるシンクロトロンに送り込む前に予備的に加速を行う。

イオン源装置及び線形加速器イメージ図
(イオン源装置及び線形加速器イメージ図)

シンクロトロン
円形加速器の一種で荷電粒子を同一軌道上を周回させながら加速する装置である。軌道上に偏向電磁石や高周波加速空洞が配列されている。荷電粒子は高周波加速空洞を通過するとき加速電場により少しずつ加速される。ビームの速度にあわせて偏向電磁石の磁場を調整することにより加速されたビームの軌道を一定に保つことができる。
本施設のような炭素線による治療装置では線形加速器から送られた炭素イオンを円形のシンクロトロンで電磁石を用い周回させ光速の約70%(最大)までに加速させる。

シンクロトロンイメージ図
(シンクロトロンイメージ図)

吸収線量
放射線が当たった物質が吸収した放射線のエネルギーで表される放射線の量。放射線によって受ける効果を表すために用いる最も基本的な量で、単に「線量」と略す場合が多い。単位はGy(グレイ)を用いる。放射線に照射された物質や人体が単位質量当たりに吸収するエネルギーで定義される。
線量集中性
周辺正常組織へ与える線量に比べて標的に与える線量の度合い。陽子線や炭素線といった粒子線治療は、従来のX線を用いた放射線治療と比べて腫瘍に対する線量集中性が高く、正常組織への照射線量を抑えつつがんに対して高線量を照射することが可能である。

線量集中性

生物学的効果
ここでは、放射線が生体(細胞や臓器)に与える影響をいう。放射線の種類によって、同じ吸収線量でも細胞の生存率が異なる。炭素線はX線と比べて一般にがん細胞に対する生物学的効果が高い(がんを治しやすい)ことが知られている。

一般的な放射線治療分野で用いられる分類

ブラッグピーク(Bragg peak)
加速された粒子線が人体など物質を通過するとき、浅い部分では少量のエネルギーしか失わないが、止まる直前に残りのエネルギーを集中的に失って停止する。このピークを発見者に因んで「ブラッグピーク」という。
マイクロサージェリー
本来は実体顕微鏡(マイクロスコープ)で確認しながら、持針器、ピンセット、メスを操って行う、非常に微細な部分の外科的手術の意味である。
群馬大学では日本原子力研究開発機構と連携して、炭素イオンビームを絞り小さな疾患の治療を行う「炭素線マイクロサージェリー技術」の研究・開発を行っている。マイクロサージェリー治療を実現することにより、重粒子線の治療対象が大幅に拡大する。対象疾患としては小児腫瘍、頭蓋底腫瘍、傍脊髄腫瘍、頭蓋内良性腫瘍、下垂体腫瘍、脳動静脈奇形、神経疾患及び眼科疾患(悪性黒色腫、老人性網膜症)などが考えられる。
群馬大学21世紀COEプログラムHP「加速器テクノロジーによる医学・生物学研究」
X線CT
コンピュータ断層撮影法(Computed Tomography)。X線を出す機器を人体の周りで回転させて多方向から照射し、検出されたデータをコンピュータで計算し画像化する方法。身体の中の各所でX線が通り易いか、通り難いかを計算したものが白黒の濃淡画像で表され、CTはX線を使用するので普通のX線(レントゲン)写真と同じように、硬い(通り難い)骨のようなものは白色、空気のように通り易いものは黒色として画像が得られる。
MRI
核磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging)。核磁気共鳴現象を利用して、磁気により生体内の内部の情報を画像化する方法のこと。X線CTと同じくコンピュータにより画像化するが、放射線を使用しないため放射線被曝がないのが特長。
PET-CT(Positron Emission Tomography-Computed Tomography)
PETとX線CTを組み合わせた装置あるいは撮影方法のこと。
PETとは、陽電子放射断層撮影のことで、陽電子を放出する放射性核種(Radioisotope, RI)で標を付けた薬剤を体内に投与し、その体内での動きを陽電子を捉えることにより画像として得る検査である。X線CTやMRIが主として臓器の形態を画像化するのに対し、PETは薬剤に応じて体の機能を画像化することができる。
特にPET検査はがん診断に有効である。がん組織の多くはブドウ糖代謝が活発であり、PETはブドウ糖を取り込む代謝の亢進組織を的確に写し出せるためこの原理を利用して体内のがん組織を発見することができる。 (参考:「CT」というと一般に「X線CT」のことを意味することが多いが、本来「CT(Computed Tomography)」という単語の意味は計算によって断層像を得る方法のことであるので、MRIやPETもCTの一種である。計算するデータの源が、透過X線強度なのか、核スピンの遷移により放射される電磁波強度なのか、陽電子消滅γ線強度なのか、それぞれの手法で異なる。)
がん対策基本法
がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とした法律として平成19年4月1日に施行された。
総務省法令データ提供システム
第3次対がん10カ年総合戦略
がんの罹患率と死亡率の激減を目指して平成16年度から開始された政府のがん対策。
以下の項目が戦略目標として掲げている。
・進展が目覚しい生命科学の分野との連携を一層強力に進め、がんのより深い本態解明に迫る。 ・基礎研究の成果を幅広く予防、診断、治療に応用する。 ・革新的ながんの予防、診断、治療法を開発する。 ・がん予防の推進により、国民の生涯がん罹患率を低減させる。 ・全国どこでも、質の高いがん医療を受けることができるよう「均てん化」を図る。 (厚生労働省HPから引用)
がん診療連携拠点病院
「第3次対がん10か年総合戦略」の戦略目標の一つのがん医療水準の均てん化の実現に向けて、各地域におけるがん診療の連携・支援を推進するため、都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が指定する医療機関のこと。  都道府県内で1ヶ所指定される「都道府県がん診療連携拠点病院」と、二次医療圏に1ヶ所程度指定される「地域がん診療連携拠点病院」がある。
群馬大学医学部附属病院は、群馬県における「都道府県がん診療連携拠点病院」に指定されている。
群馬県がん診療連携拠点病院HP
がんプロフェッショナル養成プラン
がんプロフェッショナル養成プランとは、「国公私立大学から申請されたプログラムの中から、質の高いがん専門医等を養成し得る内容を有する優れたプログラムに対し財政支援を行うことにより、大学の教育の活性化を促進し、今後のがん医療を担う医療人の養成推進を図ることを目的」(文部科学省HPから引用)とした文部科学省の補助事業のこと。
なお、平成19年度文部科学省「がんプロフェッショナル養成プラン」に群馬大学が選定されている。
群馬大学がんプロフェッショナル養成プランHP
21世紀COEプログラム
COE(center of excellence)とは、卓越した研究拠点のことで、「大学の構造改革の方針」(平成13年6月)に基づき、平成14年度から開始された文部科学省の研究拠点形成費等補助金助成事業のこと。
群馬大学として平成16年度21世紀COEプログラム(プログラム名称「加速器テクノロジーによる医学・生物学研究」)に採択された。
群馬大学21世紀COEプログラムHP「加速器テクノロジーによる医学・生物学研究」
なお、「21世紀COEプログラム」の基本的な考え方を継承しつつ、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援する事業として「グローバルCOEプログラム」が別にある。
先進医療
「先進医療」とは、新しい医療技術の出現や医療に対するニーズの多様化に対応して、先進的な医療技術と一般の保険診療の調整を図る制度のこと。保険診療をベースとして、別に特別な料金を負担することにより、先端的な医療をうけやすくする。この制度は昭和59年に高度先進医療としてスタートし、その種類、取り扱い病院ともに増加を続け、普及性の高いものは、一般の保険診療に取り入れられてきた。
なお、その名称については、平成17年7月1日以降に新規の医療技術開発として申請するものについては「高度先進医療」から「先進医療」に改正され、平成18年10月1日から「高度先進医療」と「先進医療」は統合され、現在は全て「先進医療」となっている。
T N M 分類
悪性腫瘍の病期分類のこと。がんの進行度の目安になる。
T(tumor)は原発腫瘍の進展度によりT0〜T4までの5段階に、N(nodes)は所属リンパ節の状態(特定部位では遠位リンパ節)によりN0〜N3の4段階に、M(metastasis)は遠隔転移の有無によりM0からM1の2段階にそれぞれ分類される。
QOL
Quality of Life(生活の質)の略。日常生活の満足度、充実度のこと。
5年生存率
診断から5年後に生存している割合。
放射線治療医
放射線治療を担当する医師のこと。
放射線科は、放射線診断、放射線治療、核医学の3部門から成り立っている。日本の大学では、放射線科の教授の約80%が放射線診断の専門家であり、放射線治療医は不足している。
医学物理士
医療現場での放射線治療を含む高度に物理工学的な専門家へのニーズに対応するために設けられた民間資格(社団法人日本医学放射線学会認定)のこと。放射線をどの範囲にどれだけの線量を照射するかは放射線治療医が決めるが、実際の治療に当たっては、装置の精度管理を行うことが必要でこれを医学物理士が担当する。
放射線治療専門技師
放射線治療専門の診療放射線技師として「日本放射線治療専門技師認定機構」に認定された資格のこと。
放射線治療品質管理士
「放射線治療品質管理機構」認定の資格。役割として、放射線治療装置・放射線治療計画装置QAプログラム(Quality Assurance,品質保証)の立案と実行、治療計画システムに入力するデータ作成と指示、線量測定計画のチェック、などがある。
日本放射線腫瘍学会(JASTRO)
放射線腫瘍学およびこれに関連する研究の連絡提携および促進をはかり以って学術の発展に寄与することを目的とした学会。(Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology)
日本医学放射線学会(JRS)
放射線医学的研究の促進と連絡提携を図ることを目的とする学会。(Japan Radiological Society)
日本放射線技術学会(JSRT)
放射線技術学に関する研究発表、知識の交換ならびに関連学協会との連携を図り、もって学術の進歩発展に寄与することを目的とする学会。(Japanese Society of Radiological Technology)
日本医学物理学会(JSMP)
医学における物理学、工学、情報科学及びこれらに関連ある研究の連絡提携及び促進をはかり、以って学術の発展に寄与することを目的とする学会。(Japan Society of Medical Physics)
PTCOG
Particle Therapy Cooperative Groupの略。粒子線治療についての研究情報を交換する国際会議のこと。
平成22年(2010年)にPTCOG49が群馬・千葉で開催される。