群馬大学_重粒子線医学研究センター
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センター長挨拶

群馬大学重粒子線医学センター長 大野達也

重粒子線は放射線の1つです。群馬大学では、大学設置型の施設としては国内初の重粒子線がん治療を2010年に開始しました。私達は、重粒子線の利点を最大限活用した先進的な医療を安全に提供し、患者さんの生きがいある生活に貢献できることを目指しています。

重粒子線は、一般に使われているエックス線に比べて、標的への線量集中性に優れ、生物効果が強いといった特長があるため、体への負担が少なく、効果的にがんを治療できる可能性を秘めていると言えます。また、重粒子線の治療期間は1-4週間以内と、通常のエックス線治療に比べて短いことも魅力です。今後は、他の様々ながん治療法と併用して、さらにその価値を高めることが期待されています。

大学病院で重粒子線治療を実施する第1の利点は、集学的がん治療を最適に提供できる環境にあります。近年のがん治療は、放射線治療、手術、薬物療法、免疫療法など複数の治療法を併用する集学的治療が主流になりつつあります。重粒子線医学センターは、群馬大学医学部附属病院の中央診療施設の一部であり、様々な診療科・部門と連携しています。例えば、院内キャンサーボードでは、患者さんの状態や治療方針について他分野の専門家と共有・意見交換をしています。また、緩和ケア、口腔ケア、栄養サポートなど、必要な医療チームの支援を受けながら治療を行うことも可能です。

第2の利点は、がん以外の様々な病気にもワンストップで対応できることです。がん治療を受ける患者さんの中には、高齢の方を始め、がん以外の持病をお持ちの方が少なくありません。これまで、透析、リハビリ、心臓の病状管理をしながら重粒子線治療を無事に終えた患者さんもいらっしゃいます。私達は、患者さんとご家族が安心して治療を受けることができるよう、診療科との連携をはかっています。

重粒子線治療の技術開発は日々進化していますが、この分野を担う人材の数はまだ十分ではありません。重粒子線治療では、医師、看護師、診療放射線技師、医学物理士、品質管理士、加速器運転員、事務員の他に、研究面で支援する生物研究者や治療装置の開発に携わる企業の技術者など、多くの人材が必要とされます。群馬大学ではこれらの人材を育成し、国内外の粒子線治療関連施設に輩出する役割も担っています。また、国際交流を促進して、重粒子線医学分野におけるエビデンスの発信や未来医療の研究開発にも力を入れて取り組んでいます。