センター長ごあいさつ

センター長ごあいさつ

群馬大学重粒子線医学研究センター長 大野達也

群馬大学では、大学設置型の施設としては国内初の重粒子線がん治療を2010年に開始しました。群馬大学重粒子線医学研究センターは、重粒子線の利点を最大限活用した先進的な医療の開発と提供、そしてこの分野を担う人材の育成を通じて社会貢献を果たしていきます。

重粒子線は、一般に使われているエックス線に比べ、標的への線量集中性に優れ、生物効果が強いといった特長があるため、体への負担が少なく、効果的にがんを治療できる可能性を秘めています。また、重粒子線の治療期間は、通常のエックス線治療に比べて短く、早期社会復帰という点で魅力です。今後は、集学的がん治療の開発により、さらにその価値を高めることが期待されています。

私達は、重粒子線治療で蓄積された医学データベースを活用しつつ、生物学、物理学を含む分野横断的な視点で、さらなる局所照射技術の高精度化や併用療法の最適化、新たな適応拡大等を目指した研究に取り組み、治療の安全性、有効性、効率性を向上させたいと考えています。国内重粒子線治療施設とのネットワーク形成、産業界や研究機関との連携推進、さらには海外の先進的粒子線治療施設との活発な学術交流のもとに共同研究を推進し、重粒子線医学分野における国際拠点の形成に力を入れています。

重粒子線治療の技術開発は日々進化している一方で、この分野を担う人材数はまだ十分ではありません。重粒子線治療では、医師、看護師、診療放射線技師、医学物理士、品質管理士、加速器運転員、事務員の他に、研究面で支援する生物研究者や治療装置の開発に携わる企業の技術者など、多くの人材が必要とされます。群馬大学ではこれらの人材を育成し、国内外の粒子線治療関連施設に輩出する役割も担ってきました。大学院博士課程リーディングプログラムでは、海外の優秀な学生が本学で重粒子線医学研究を学び、修了後は粒子線治療施設で若きリーダーとして活躍しています。群馬大学重粒子線医学研究センターでは、今後も社会から信頼され実践力を有する医療人材、高い倫理観と豊かな学識に立脚し、創造的能力を備えた研究者の養成に取り組んで行きます。